2011年05月19日

秘密にせざるを得ないこと


福島第一原発の事故を受けて
原子力に注目が集まっています。

そこで、放射線汚染の一番の恐ろしさは
人体への悪影響自体より、
汚染があまりにも長く続くことだ、
という理解が広まってきたと思います。


そして、人類が原子力を使う上で、
一番の問題となるのは、
核廃棄物の問題だと思われます。

福島原発の事故でも、
使用済み核燃料のプールでも
事故が起こっているようです。

こんな危険なものを、
何千年とか何万年とか、
人の一生をはるかにこえるスケールで
安全に保存しなくてはいけないのです。

非常に難しい問題ですね。


そして、日本では、
まだ最終処理の施設はできていません。

何箇所か候補地はあるようなのですが、
地元の反対でどれも前進しないのですね。

まあ、自分の住んでいるところに、
処理場ができるなんて、嫌でしょうから
当然なのかもしれませんが…。


しかし、この最終処理の問題、
本当に情報が少ないです。

特に、国や電力会社など、
原子力の運用者から出ている情報が
ほとんどありません。

目前の明らかな問題なので
考えがないわけではないと思います。

様々な考えはあるのでしょうが、
うかつに情報を漏らしてしまうと
問題なので、黙っているのでしょう。


本来はこういう問題こそ、
様々な立場の人がオープンに
話し合うべきだと思います。

でも、現状では情報を公開しても、
無用な争いや不安を生むだけに
なるでしょう。

秘密にせざるを得ないことは
やっぱり存在しているのです。

願わくば、社会がそこまで成熟して
実のある議論ができるように
なれば良いのですが。

posted by エンジニアライター at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | テクノロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月14日

原発がなぜあそこに建っていたのか


浜岡原発の停止の話を受けて、
そもそも原発がなぜあそこに建てられたか
という疑問が投げかけられることがあります。

原発の立地に関しては、
地震の可能性など様々な検討が
行われるはずです。

なのになぜ今になって、
危険すぎるから停止する
という事になってしまうのでしょう?


一見難しそうな問題ですが、
原発をとりまく様子を見ていれば
原発立地の選定で一番重要なのは
何かということは明らかではないでしょうか?

一番重要なのは建てられること、
つまり地元の同意が得られることです。

原発の立地については、
日本中の土地の中で、
リスクが低いところを探すことが
望ましいのですが、
実際は地元の同意が得られそうな
極めて少ない選択肢の中から
選んでいることが現状でしょう。


福島の原発事故についても、
そもそも同一の場所に6機も
炉が存在することが事故の拡大を招いた
という意見があります。

これも同じことです。
リスク分散のためには分散した方が
確かに望ましいことではあります。

ただし、他に建てるとなると、
また地元を説得することが必要です。

それができなかったために、
同じ場所にたくさんの炉を
建てざるを得なかったのです。


科学技術といっても、
決して全てが科学的、論理的に
決められるわけではないのです。

逆にそんな部分には、
専門家でない人にとっても
科学技術政策に入り込む余地は
ちゃんと残されているとも
言えるのです。
posted by エンジニアライター at 22:23| Comment(0) | TrackBack(0) | テクノロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月22日

御用学者の悲しさ


普通の科学者や技術者は
100%とか「絶対」という言葉は使いません。

なぜなら、そんなものは存在しないことは
研究開発を行っている本人達が
一番わかっているはずだからです。

逆に、もし100%とか「絶対」と言う
専門家がいたとしたら、その人は何かが変です。
その人の言うことは信じてはいけません。


「普通の科学者や技術者は」
と前置きしたのですが、
専門家としては人格や知識が問題なくても
例外的に絶対という言葉を
使わざるを得ない人がいました。

それが、原子力のいわゆる御用学者
という人たちです。

それがどの程度の確率と考えるかは、
人によって異なるでしょうが、
彼らは、本当は絶対安全などではないと
自分自身が一番良くわかっていたと思います。

それでも、立場上「絶対」と言わねばならない
最初はストレスだったと思います。

しかし、繰り返していくうちに、
いつしか自己暗示のような状態に
陥っていたのでしょう。


彼らを批判するのは簡単ですが、
彼らをそこまで追い込んだのは
一体何だったのか?

その問題に正しい答えを出せないことには
科学によるこの種の悲劇は
繰り返されることでしょう。
posted by エンジニアライター at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | テクノロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月16日

原子力がクリーンになるための条件


「原子力がクリーンである」
二酸化炭素を直接には放出しないという意味で
昔こんなことを言っていた人もいましたが、
現在そんなことは誰にも言えないでしょう。

原子力のもつ本質的な「汚さ」が、
完全に普通の人にも知れ渡ってしまいましたから。


とはいえ、汚染という問題は放射能に限らず
薬物、重金属、有害ガスなど色々存在するわけです。

その中でも、特に放射能が別格に扱われる
理由は何なのでしょうか?


やはり、それは「消えない」ということにあるのでしょう。
人間の寿命と比較して、下手をすると文明と比較しても
完全に「無限」になってしまう放射能汚染の時間スケールは
恐怖以外の何者でもありません。

しかし、逆に言えば、この「時間」の問題さえ解決すれば
原子力は人に優しいエネルギーになりえるのです。


今、福島で立ち向かっている
一番大きな問題は「冷却」です。

原子炉や冷却プールの中は、
非常に大きなエネルギーを出す
「臨界」の状態ではありません。

現在は原子力利用からすればオマケのような
「崩壊熱」と戦っているのです。

それにしてもオマケといえど非常に大きな熱です。

あれだけ、水をかけ続けて冷却しても、
少し油断すると危機的な状況に戻ってしまいます。


僕のような素人からみると、
この熱も発電に使うことはできないのか
と思ってしまいます。

なんらかの方法で、核の崩壊を促進することができれば
その崩壊熱も発電に利用することができるかもしれないし、
なにより、放射能の有害性を減らすことができます。

もし、そんな技術が開発されれば、
原子力はクリーンなエネルギーとなれるのかもしれません。


まあ、こんなことは僕でも考えるようなことですから、
だれでも考えていることなのでしょう。

あれほど問題にされながら、高速増殖炉を続けているのも
そんな思惑があってのことなのかもしれませんね。

posted by エンジニアライター at 22:23| Comment(0) | TrackBack(0) | テクノロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月22日

なぜ、科学技術を勉強するのか?


なぜ、科学技術を勉強するのか?

特に、子どもでなく大人向けの科学技術教育を
考えていた僕にとっては、
この問題は非常に難しい問題でした。

子どもや学生であれば、
将来の選択の幅を広げるため、
で良いかもしれません。

しかし、既に社会で活躍している大人にとって
しかも科学技術の知識を必要としない職の人が
科学技術を学ぶ目的とは一体何なのでしょうか?


もしかして、その解はない
つまり、結局専門外の人間は科学技術を
学ぶ必要はないのだろうか、
とさえ考えたこともあります。

しかし、今回の大震災を通して、
その必要性が明確になったと思います。


科学技術を学ぶ理由とは、
社会の基盤をなす技術を
選択するためなのです。

例えば、今回の原発の問題を通して
これから日本として電力供給をどうしていくか、
この問題は一部の技術者や研究者だけでなく
一般市民が参加して決定されるべきものなのです。

そうなると、専門外の人にとっても
ある程度技術を身につける責任が生じる
といえるわけです。


ただし、そんな目的に特化したコンテンツは
現在はほとんど存在していません。

それを提供することが、
自分の使命なのではないか、
今、そんなことを考えています。

posted by エンジニアライター at 00:38| Comment(0) | TrackBack(0) | テクノロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする