2010年02月09日

半導体というブラックボックス


ブラックボックスという言葉があります。

これは、期待される機能がある装置なのですが、
その中身は全く理解できていないもの
を指す言葉です。


そして、自分たちの身の回りの中で、
あふれているブラックボックスって
なんと、いっても電子機器だと思うのです。

携帯電話、パソコン、テレビ、カーナビ
これらは身の回りにあふれていますが、
動作する原理を知る人はほとんどいないでしょう。

その原因こそが、半導体ではないか?と思います。

電子機器の中心は半導体ですが、
一般にはその名前さえよく知られていません。

まあ、実物も黒い樹脂で固められているので、
文字通りブラックボックスですね。

電子機器を知ることは、半導体を知ること、
こんなところから半導体の役割を
世に認知してもらえるように
すれば良いのかな、と思いました。


posted by エンジニアライター at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 半導体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月07日

日本の半導体産業は復活できるか?


年末にこの本を読んでいました。
半導体の開発に携わる私としては、非常に苦しい話ですが
現実から目をそむけるわけにはいきません。

日本「半導体」敗戦 (光文社ペーパーバックス)

日本の半導体産業は衰退の一途をたどっています。

例えばDRAMなどは、80年代の最盛期、
実に世界の8割を日本で生産していたのですが、
現在は2割程度に落ち込んでいます。

2000年代に入って繁栄した自動車産業と比較して、
日本の失われた10年+αの代表的産業と
揶揄されるようになってしまっています。


その原因は一体何なのでしょうか?

この著者は、業界に過剰技術・過剰品質の病気がある。
そして、業界自体がそれに気づいていないからだ、
と指摘します。

著者は半導体技術者としての経験もあり、
その論理には説得力があります。

ただし、著者は2002年に日立を早期退職しており、
現状とは少し状態が違うと考えています。

私もこの業界で仕事をしていますが、
現在は病気には気づいてはいると思います。

すこしづつ良い方向には動いています。
ただし、世の中の変化に追いついていない感はあり
本当に復権が可能かどうかは極めて疑問です。


この本で一番興味深かったのが、
エルピーダの分析です。

エルピーダは2000年にNECと日立のDRAM部門が
合併する形で誕生しましたが、
設立当初は社内の意思疎通がうまくいかず、
一時は相当酷い状況に追い込まれました。

しかし、経営者が変わったのをきっかけに、
息を吹き返し、現在はトップの韓国勢の
後姿が見えてくるまでになっています。

この会社に何が起こったのか?
何が悪かったのか、何が良かったのか?
本書では、業界関係者も納得のいく形で
的確に考察されています。

特に、少数派である三菱出身者の
果たした役割についての記述には、
新鮮さを感じました。


これから、半導体業界も大型再編が控えていますが、
今までの合併を徹底的に研究して、
同じ失敗を繰り返さないようにしないといけないですね。

posted by エンジニアライター at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 半導体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月20日

半導体は産業のコメ


半導体は産業のコメだ。
といわれています。

電子部品の結晶であるコンピュータをはじめ、
身近では携帯電話、家電、自動車などなど、
電気と名のつくところには
必ず半導体が存在しています。

ただし、それほど重要なものなのだから
これからも発展し続けるのだろうか、
といえば、こと日本に限っては
まったくそうではありません。

今、本当に半導体産業は苦しんでいます。


重要な産業といえば、人間にとって一番大切な
食料を生産する農業や漁業、畜産業。
それが、現在の日本で盛況しているか…。
残念ながらそうではありません。

過疎、高齢化、低賃金。
やっぱり苦しんでいます。

こんなところも半導体は「コメ」と呼ばれることに
重なって見えてきますね。


日本のような先進国では、
基本的な産業は衰退していくものなのでしょうか。

posted by エンジニアライター at 06:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 半導体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月01日

頑張れ!エルピーダ

経済新聞やニュースで、
エルピーダメモリに公的資金が注入される
というニュースを知っている方もいるかと思います。

この会社は、パソコンや携帯、デジタル家電などに
使われているメモリ(DRAM)というものを
作っている会社です。

先日、半導体はヤクザな世界、という記事を書きましたが
この業界は、まさにこのチキンレースが
実際に行われています。


この業界は、去年まで、日本1社(エルピーダメモリ)
米国1社、欧州1社、韓国2社、台湾数社で
成り立っていました。

ところが、この世界不況のあおりを受けて、
欧州の会社が倒産、そして台湾の数社が1社に
統合される予定です。

まさに、チキンレースも最終局面に入ったところです。


エルピーダという会社の成り立ちは、
まず、日立とNECが事業をあきらめて
合弁会社を設立したことに始まります。

その後、東芝、三菱なども事業譲渡し、
日本のDRAM事業はエルピーダ1社になりました。

そして、その後シェアが急落し、
一時は日本から、DRAMがなくなるのではないか
と言われていましたが、
坂本氏という優秀な経営者を招き、
急速に勢いを取り戻してきました。


公的資金を注入するというと、
良いイメージがないかもしれません。

しかし、この業界は特殊で、
生き残るためには、莫大な資金が必要なのです。

これは決して、後ろ向きなことに使う
お金ではありません。


日本半導体の数少ない希望である
エルピーダメモリ
皆様、応援してください。




蛇足ですが、私はこの会社の社員ではないことを
おことわりしておきます。
posted by エンジニアライター at 06:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 半導体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月13日

半導体産業はヤクザな世界

このブログにも半導体業界の不況の深刻さ
を書いてきました。

ただし、この業界の不況が深刻なのは
単にリーマンショックが起きたから、
というレベルの問題でなく
産業特有の構造的原因が根底にあります。

チキンレースという言葉がありますが
まさに半導体産業のためにあるような言葉です。


わかりやすいようにパンに例えてみます。

あるパンがあります。
この原価は、10個作るのに1000円
1000個作るのに10000円、
10000個作るのに20000円かかります。
一体、何個パンを作りますか?

10個作った場合は原価100円。
1000個作った場合は10円。
10000個つくった場合は2円。

当然、たくさん作った方が得です。

だから、どのパン屋もムリして借金して
とにかく沢山パンを作ります。

とはいえ、消費者もそんなに沢山のパンは
必要としていないからどんどん値段は下がります。

しまいには、1個1円になってしまいました。
これでは作れば作るほど赤字です。

でも、沢山作るのを辞めてしまえば、
原価が高くなるので、赤字を出しながらでも
沢山作るしかありません。

そして、パンを作るためのお金がなくなった
順番にどんどんつぶれていく…。

儲かるのは最後に残った1軒だけ。
だから、お金のあるお店は他のお店を
つぶすために、赤字を出しても
とにかく沢山パンを作る。


半導体、特にメモリと呼ばれるものの
産業構造は誇張でなく、こんな感じです。

本当にヤクザな世界です。
posted by エンジニアライター at 05:33| Comment(1) | TrackBack(0) | 半導体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする