年末にこの本を読んでいました。
半導体の開発に携わる私としては、非常に苦しい話ですが
現実から目をそむけるわけにはいきません。
日本の半導体産業は衰退の一途をたどっています。
例えばDRAMなどは、80年代の最盛期、
実に世界の8割を日本で生産していたのですが、
現在は2割程度に落ち込んでいます。
2000年代に入って繁栄した自動車産業と比較して、
日本の失われた10年+αの代表的産業と
揶揄されるようになってしまっています。
その原因は一体何なのでしょうか?
この著者は、業界に過剰技術・過剰品質の病気がある。
そして、業界自体がそれに気づいていないからだ、
と指摘します。
著者は半導体技術者としての経験もあり、
その論理には説得力があります。
ただし、著者は2002年に日立を早期退職しており、
現状とは少し状態が違うと考えています。
私もこの業界で仕事をしていますが、
現在は病気には気づいてはいると思います。
すこしづつ良い方向には動いています。
ただし、世の中の変化に追いついていない感はあり
本当に復権が可能かどうかは極めて疑問です。
この本で一番興味深かったのが、
エルピーダの分析です。
エルピーダは2000年にNECと日立のDRAM部門が
合併する形で誕生しましたが、
設立当初は社内の意思疎通がうまくいかず、
一時は相当酷い状況に追い込まれました。
しかし、経営者が変わったのをきっかけに、
息を吹き返し、現在はトップの韓国勢の
後姿が見えてくるまでになっています。
この会社に何が起こったのか?
何が悪かったのか、何が良かったのか?
本書では、業界関係者も納得のいく形で
的確に考察されています。
特に、少数派である三菱出身者の
果たした役割についての記述には、
新鮮さを感じました。
これから、半導体業界も大型再編が控えていますが、
今までの合併を徹底的に研究して、
同じ失敗を繰り返さないようにしないといけないですね。
posted by エンジニアライター at 23:57|
Comment(0)
|
TrackBack(0)
|
半導体
|
|