2023年01月23日

意味と構造がわかる はじめての微分積分


 私の新著『意味と構造がわかる はじめての微分積分』が出版されました。
 この本は微積分がどのように世の中で使われているか? から始まり、微積分の意味を順序だてて説明しました。

 数学の専門家の本は、論理や厳密性を重視するので、どうしても難しくなってしまいがちです。本書では多少厳密性を犠牲にしても、直感的で普通の人間の思考過程に合う説明ができたと自負しています。
 特に、微積分が何の役に立っているのか、知りたい学生の方、数学に興味のある社会人の方にお勧めです。


以下に「まえがき」を示します。
★まえがき★
 高校で勉強する数学の中で、多くの人にとって、最も役立つのは微分積分でしょう(以降、微積分)。
 なぜなら、微積分を学ぶことによって、数字から得られる情報が倍以上になるからです。

 得意、不得意にかかわらず、現代人は数字から離れることはできません。お金、利益率、客数、客単価、継続率、平均時間、回転率、稼働率、不良率、こんな様々な数字に囲まれて過ごしているのではないでしょうか?

 微積分を学ぶとこんな数字から、さらに多くの情報を引き出すことができます。
 優秀な人は一を聞いて十を知ると言いますが、微積分を学ぶと元の数字から得られる情報が倍以上になるのですから、優秀に見えるのは当たり前のことだと思います。

 とはいえ、高校の微積分がわからなくてもがっかりする必要はありません。微積分の本質は、高校で習うような複雑怪奇なものではないのです。
 詳しくは本書の1章を読んでほしいのですが、あなたが今まで普通に数字を分析していた方法の中に、微積分の考え方が多く含まれています。
 そうです。差分や累積、それを数学的に体系化したものが微積分なのです。

 身の回りの数字にも微積分は溢れていますが、その力が最も発揮されているのは理工学の分野と言えます。車が走るのも、飛行機が飛ぶのも、ビルが建つのも、スマートフォンで通話ができるのも、ロボットが私たちの手助けをしてくれるのも、微積分の力なしにはありえません。
 
 その中でも現代社会で特に重要なものがコンピュータです。世の中で唯一、生物以外に「考える」ことのできるコンピュータは、社会の至るところで活躍しています。パソコンはもちろん、スマホの中にも、車の中にも、冷蔵庫や掃除機や洗濯機のような家電の中でも働いてくれています。
 つまり、コンピュータは身の回りで私達の生活を助けてくれる仲間のようなものです。その身近な仲間の思考回路を知ることは大事ですよね。職場で同僚や上司、部下の気持ちを理解することが大事なのと同じことです。
 そして、そのコンピュータの思考回路こそが、数学です。数学、そしてその核となる微積分を学ぶことはコンピュータの「気持ち」を学ぶことに役立つのです。


 ご挨拶がおくれました。私は半導体エンジニアとして働いている蔵本貴文と申します。普通、このような数学の本を書くのは、数学の先生や教育者だと思うかもしれません。でも、私はそんな人間ではありません。
 ただ、私は数学無しでは成り立たない仕事をしています。専門分野は「モデリング」という仕事で、三角関数、指数・対数、行列、複素数、そして微積分を駆使して、半導体素子の特性を数式で表す仕事なのです。

 ですから、私は学問としての数学ではなく、「数学を実務に活かす」立場の数学を論じることができます。世の中に数学の専門家が書いた数学のための数学の本はたくさんありますが、一般の人に求められているのは、意外に私が使っているような数学なのではないかと考えています。 


 最近、娘が高校生になって、数学や物理を教えることが増えてきました。その中で思うことは、数学が難解である原因は抽象的なところにあることです。
「この問題がわからない」と言われたときに、一番理解してもらえる方法は、文字に数字を入れたり、グラフを描いたり、図を描いたりして具体化することであると気づいたのです。

 例えば、日本の高校に通う高校生で、いくら数学が苦手だったとしても「1+2」の計算ができない学生はいないと思います。
 しかし、「x+2x」であればわからない学生もいるでしょう。そして「f(x)+2f(x)」になると、そこそこ数学ができるはずの学生でも悩む場合
があります。これらの計算の本質は全く変わらないのにもかかわらず、です。


 これは文字や記号を使った抽象化が理解の大きな妨げになっていることに他なりません。もちろん、数学は抽象化によって発展してきました。だから最終的には抽象的なものが理解できた方がよいです。
 しかしながら、特に初学者にとってはその抽象化によって、学習を門前払いされてしまうことが多いのです。

 ですから、本書では具体的に記載することに徹底的にこだわりました。xとか、f (x)とか、dx/dy とか、∫とか、抽象化した文字や記号を使わざるを得ない時には、詳しく具体的な説明を加えました。

 また、数式は抽象的すぎて嫌われやすいので、本書の2章までは全く数式は使っていません。特に数式嫌いな人にとって、微積分を受け入れやすい説明だと自負しています。
 さあ、微積分の世界にようこそ。微積分の考え方を身につけることにより、数字を扱う能力が向上し、あなたの好奇心を満たし、そしてコンピュータの気持ちの一端が理解できるようになるでしょう。
 それでは、さっそく微積分の本質に迫っていきましょう、と言いたいところですが、もう少しだけまえがきにお付き合いください。あなたのタイプに合わせて、この本の使い方をアドバイスしたいと思います。
posted by エンジニアライター at 14:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 出版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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