本書はシャープで電卓戦争の中心として
半導体や電卓の開発に携わった
佐々木正氏の半生を描いたものです。
若い時には、戦時の軍事研究、
それから神戸工業とその衰退を経て、
シャープに入社します。
その活躍が、本当にドラマテックです。
周囲の猛反対を押し切って進めた
MOSFET技術の導入など、自分の信念を貫き、
そしてそれを成功させます。
電卓に液晶ディスプレイを採用したのも
シャープが先駆けとは聞いていましたが、
それも佐々木さんの力あっての
ことだったのです。
佐々木さんはエンジニアとしての
腕や勘ももちろんですが、
膨大な人脈とそれを結びつけるコネクタの
ような存在となって、活躍されていたようです。
社長よりはるかに多い交際費を使っていた
という記述もありました。
もちろん、それに見合う十分な成果を
上げられていたのですが。
こんな方が上司だったらいいなと、
素直に思わせてくれました。
残念ながら、佐々木さんをはじめ、
昭和の時代に先人が築いてくれた
日本半導体業界の繁栄は、
今はみる影もありません。
しかし、それを嘆くのではなく、
佐々木さんのような方の生き様に学んで、
また、ゼロから何かを作り上げる気合が必要
なのだと感じました。
戦後の焼け野原から、
これだけのことを成し遂げられたのです。
我々にもできることがあるはずです。