教科書で教えている数学というものは
とても融通がきかないように見えます。
教科書の数学の答えは一つですが、
実際の数学の答えは一つではありません。
式を作ることが大事という話をしましたが、
問題のための作られたデータならともかくとして、
実世界の生きているデータを表す式が
たった一つに絞られるなんてことは幻想です。
また、実際には答えがない、という問題も多いです。
数学を使う現場においては
答えが存在することがわかってしまえば、
すでに問題は8割方解決されているといえるかもしれません。
数学の証明問題で、
「この命題は試験問題である→試験で証明できない
命題はない→よって命題は正しい」
という証明をしたという学生の笑い話がありますが、
この学生は試験では失敗しても、
世の中に出れば成功できるのでしょう。
どんな論理であれ、見当をつけるということは大事です。
さらに、数学は一般に論理の学問と思われているでしょう。
そして、教科書の世界にとどまる限りは
それは100%正しいです。
しかし、実際に使われる数学では、
直観も非常に大事になってきます。
本文中で関数の式とグラフは
デジタル時計とアナログ時計の違いのようなものだ
という話をしました。
でも、数学が本当に論理だけの学問であれば、
アナログなど必要なく、デジタルだけで良いはずです。
数学を使う現場ではたいてい、まずデータを
グラフにプロット(アナログ情報)します。
そして、どんな傾向を持っているか、
グラフをながめながら直観を働かせます。
そして、このデータを表現するためにはどんな式を
使えばよいか考えるわけです。
この過程で直観が非常に大事になってくるのです。
数学をはじめ、物理学や化学などの理系分野でも、
一流の研究者は論理ガチガチであるよりも、
むしろ直観的であると言われています。
本当に論理だけで解決できる問題であれば、
それはコンピュータに任せておけばよいです。
人間が問題に取り組む以上は、どんな分野であれ、
感覚を磨く努力を怠ってはいけないのですね。